中小企業は、わが国企業の約9割、雇用全体の約7割を占めるなど、わが国経済の基礎を形成する存在。
このような中小企業の事業承継を円滑化することは、事業の継続・発展を通じて、雇用確保、地域経済の
活力維持に資するものとしてきわめて重要である。
特に、ここ25年間で中小企業の経営者の平均年齢が5歳上昇して58歳になるなど高齢化が進展しており、
日本経済の発展を支える中小企業の事業承継問題への対応が喫緊の政策課題となっている。
しかし、実質的に所有と経営が一致している中小企業においては、経営者の相続に伴ってさまざまな課題
が発生することからこのたび「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が制定された。
法成立日:平成20年5月9日
公布日:平成20年5月16日
施行日:平成20年10月1日 ※
※内、民法の特例に係る規定は平成21年3月1日から施行される。
関連URL:http://www.meti.go.jp/press/20080205003/02_gaiyou.pdf
1.事業承継を取り巻く現状
(1)後継者以外の相続人の遺留分(※)が制約となって、先代経営者が保有する自社株式や事業用資産を
後継者が集中して承継できない場合がある。
※遺留分・・・子供や配偶者に民法上保障される最低限の資産承継の権利であり、原則法定相続分の半分。
(2)資金調達の困難性が挙げられる。経営者の交代に伴う事業承継に際しては、金融機関に対する信用
力の低下が生じると同時に、経営の安定化のために後継者や会社が自社株式等を取得するさまざまな
資金ニーズが生じることがある。
(3)先代経営者の相続開始に伴い、自社株式等を相続した後継者に多額の相続税が課税されるときがある。
この際、後継者が納税資金としての現預金を十分に保持していない場合があるし、仮に納税資金に見合う
だけの現預金があっても中小企業経営者の多くは会社の債務について個人保証している場合もある。
この点を踏まえると、相続税負担は、中小企業経営者にとって事業承継の際の大きな障害の一つとなっている。
2.現状を踏まえた法整備の概要
(1)遺留分の民法特例 |
3年以上事業を継続して行っている非上場中小企業の後継者が、先代経営者の遺留分権利者全員との間で 遺留分の算定に係る合意を行い、経済産業大臣の確認及び家庭裁判所の許可を経ることによって、当該合意 の効力が生ずるとした。 具体的には、後継者が先代経営者からの贈与等により取得した自社株式について、 @ 遺留分を算定するための財産の価額に参入しないこと。 A 遺留分を算定するための財産の価額に参入すべき価額を合意の時における価額とすることが可能なこと。 |
(2)金融支援措置 |
先代経営者の死亡等に起因する経営の承継に伴い、事業活動に継続に支障が生じていると認められる中小 企業が経済産業大臣の認定を受けた場合において以下の支援策を講じる。 @ 中小企業の資金の借り入れについて信用保険を別枠化する。 A 中小企業(会社)の代表者に対して鞄本政策金融公庫が必要な資金を貸し付けることを可能とする。 (現行では、政府系金融機関が代表者個人へ融資を行うことはできない。) |
(3)事業承継税制の適用要件 |
事業承継の際の障害のひとつである相続税負担の問題を抜本的に解決するため、 経済産業大臣の認定を受けると、非上場の中小企業(会社)の自社株式に係る相続税の軽減措置を講ずる。 @ 現行の10%減額から80%納税猶予に拡大する。 A 対象を中小企業全般に拡大する。 ※この納税猶予制度は、平成21年度税制改正で創設されるが、法律施行日である本年10月1日以後の相続に 遡って適用される。 経済産業大臣の認定を受けるための要件は以下のとおり。 ・先代経営者の生前における計画的な取り組み ・相続前後の相続人・被相続人の株式保有要件 ・当該認定を受けた後における雇用確保 ・5年間の事業継続 |
出展:http://www.komei.or.jp/news/2008/0516/11515.html
Write at 2008/09/23 |