経営理念から始まる、ドメイン、経営戦略、そして経営計画

企業経営で成功している多くの企業は、それぞれ独自の「経営理念」を有しています。
中小企業であっても、利害関係者(ステークホルダー)を取り込んだ企業経営が実践できるよう、
自社の経営理念について検討したいものです。

経営が上向いているときでも、やや芳しくないときでも、社長や従業員がわが社の一本柱を共有できていれば、
同じ気持ちで立ち向かえっていけるのではないでしょうか。


【経営理念〜事業ドメイン〜経営戦略〜経営計画までの体系】

経営理念(社是・社訓)  【経営理念】とは、経営者が企業の運営にあたって、経営の目的を明確にし、その目的を実現する
ために、その組織が共有すべき価値観(モノの考え方)を明文化(文章化)したものである。

 【経営理念】
とは、経営層が持つ経営哲学や世界観をまとめたもので、企業経営や組織の基本像
(原点)を示すものです。

 【経営理念】
とは、経営者が企業経営に対してもつ基本的な価値観、態度、信条のことである。
 企業理念
とほぼ同じ意味で用いられます。
詳しくは、下に↓
事業ドメイン  経営戦略(ビジネスモデル)を策定する前段階として、まずは経営理念から自社の存在意義を確認
する必要があります。そのためには、自社がどのような分野で活動するかを定めた【事業ドメイン】
決定します。
 単純にいえば、「誰に、何を、どのように」提供するかを示したものです。
【事業ドメイン】【事業領域】ともいいます。
【事業ドメイン】を検討するには、自社の置かれた外部環境や内部環境を正しく認識することが必要
となり、そのための分析手法として『SWOT分析』を行います。
『SWOT分析』から自社の強み”コア・コンピタンス”を確立することが大切です。
経営戦略
(ビジネスプラン)
【経営戦略】【経営理念】を実現するための手段です。
尚、経営戦略】には、「3年後に20%の利益増大」や「3年後に上場」など、具体的な目標をが必要
です。
【経営戦略】は、『経営目標』とも同義です。
経営計画 =経営計画の作成手順=
ステップ1 経営計画の作成準備(プロジェクト化)
 まず、経営計画作成のための委員会を発足させる。社員にとってお仕着せの経営計画にならないた
めに、社長が一人でつくるのではなく、社長が委員長、各部門の代表が委員として、社員の総意を反
映させる。
  ステップ2 経営理念の明示
 経営計画は、経営理念から始まる。経営理念とは、何のために企業経営をしているのか、企業の存
在目的を明確にすることである。人にもそれぞれ価値観があるように、経営理念は企業の価値観であ
り、企業を経営していく場合の行動指針となる。
 経営理念の例:良い製品を社会に送り出し、自社製品を通じて地域社会に貢献する。
  ステップ3 ビジョン(将来構想)の作成
 わが社の将来像をつくる。いわゆる「夢」の部分である。「わが社を将来どのような企業にするのか」
という考えをもとに、経営トップの強い思い入れを入れる。「○年後、株式公開」「地域ナンバーワン」な
どが考えられる。「夢」を現実に持っていくためにも、いつまでには実現させるという「夢に日付」を入れ
るようにする。
  ステップ4 外部環境の分析
 ポイントとしては、@ 当該業種の現状と将来、A 消費者の動向、B 取扱商品の需要動向と消費動
向 などが考えられる。
 こうした環境の動向を見ることにより、当社に与える「脅威」と当社にとっての「機会(チャンス)」を見
ていく。
  ステップ5 自社能力の分析
 自社の力がどれくらいなものか分析する。
 自社の力を把握しておくことは大切で、そのためには自社の資源の棚卸しを行い、
自社の「強み」と「要改善内容」を明確にしていく。
具体的には、人(社員)、モノ(商品、店舗、工場)、金(財務状況)、情報などの面を中心に分析する。
  ステップ6 経営目標の設定
 外部環境の分析、自社能力の分析をもとに、ビジョン実現のための中期(3年程度)の経営目標を
作成する。
 外部環境及び自社能力に合った目標を設定することで、実現可能性のほかに納得性のある目標
設定が可能となる。
 経営目標としては、売り上げ、経常利益といった定量的な数値目標が分かりやすい。
そのほか、定性的なものを入れてもかまわない。
  ステップ7 経営方針の作成
 経営目標を達成するために、事業領域をどうするか、経営資源(人・モノ・金等)の枠組みをどうする
かなど、自社の基本的な取り組み方針を作成する。
目標をゴールとすれば、方針はそのためにとるべき手段・行動の仕方を示すものである。
  ステップ8 全社基本計画の作成
 具体的には、3年間の「利益計画」、「投資計画」、「人員計画」、「資金計画」、「新規事業計画」など
を作成する。中期経営目標を踏まえた上で作成していく。
  ステップ9 部門別計画の作成
 ステップ8の全社基本計画をもとに、中期の部門別計画を作成していく。
 具体的には、3年間について、各部門別に例えば「営業部門計画」、「購買部門計画」、「総務部門
計画」、「製造部門計画」等を作成していく。

【経営理念って?】

「自社は何のために経営するのか」を社内外に表すものであり、企業として社会的責任を遂行するための基礎となるものである。
経営理念は、社長室に掲げるものではなく、全員がこれを認識して行動することにより、この価値観が企業文化として定着する
ことが重要なのです。
経営者としてこの会社をどのようにしていきたいかという「思い」や「志」を明文化したものが「経営理念」であり、
そこに至る走り方が「経営方針」であり、ゴールが「経営目標」、その道筋が「経営計画」であるといえる。


【社是・社訓との違いは?】

社是とは、「その会社で働く社員の指針として定めた理念や心構え」、
「その会社で社員が守るべきものとして方針として決めているもの」、
「社是・社訓は企業の憲法である。顧客や社会の信頼関係を作り、企業の顔を明確にすることこそ新たな成長が可能になる。
経営の重要な判断のよりどころであると同時に、人材育成の点で非常に重要な意味を持つものである。」
となる。
経営理念と社是・社訓の関係は、
@ 経営理念は社是・社訓に述べられている。経営理念は、綱領や社是・社訓といった形で表すこともある。
となり、同一のものと捉えられる。


【経営理念を明確にする目的は?】

@ 自社の存在意義を社外に明確にして、自社の存在を社会的に受け入れられるようにする。
A 社員の帰属意識、一体化を高めることができる。
B 社員の行動のよりどころになる。
C 意見の対立があったときに、判断のよりどころにすることができる。


【ドメインこぼれ話し・・・】

【ドメイン】の設定に当たっては、ドメインの広さに留意する必要があります。
ドメインを広く定義すると、経営活動が分散してしまい方向がまとまらなくなる危険がある一方で、逆に狭く定義すると、
活動が限定されて企業の成長が妨げられる危険があります。
米国の多くの鉄道会社では、自社を「鉄道屋」と規定し、ハリウッド映画会社の多くは自社を「映画会社」であると規定
していました。その結果、ハイウェイやテレビの進出に無関心となり没落してしまいました。これを近視眼的マーケティ
ングといいます。それに対して、鉄道屋ではなく「移動産業」や映画会社ではなく「娯楽提供産業」であるとドメインを設
定していれば、新たな時代に対応した戦略を発見できたはずといわれています。
このように、ドメインの設定は非常に重要なのです。


【経営理念のつくり方・・・】

【経営理念】をつくり場合の視点は「分かりやすい」「普遍性」「永続性」を意識して考えましょう。
そして【経営理念】づくりの4つの視点は、
@ 自社の理念の来歴はどうか?
  これまでの自社の理念の変遷を検討する。理念、社訓といわれるものがどういう経緯で使われてきたか、あるいは使われなくなってきたか。
  何らかの社会的条件とともにその意味 するところが変わったか。明文化されていないものや、創業者など歴代の経営者の言動の中に経営
 に大きな影響を及ぼしたキーワードはないか。

A 先進・優良企業の経営理念はどうか?
  あるべき経営理念を参考にする。ただ、ミニ版にならないように深入りせず、自社固有の理念おあり方を追求する。
B 世の中の変化から見て、何に重点を置くか?
  社員の意識の変化、顧客の企業に対する期待の変化、株主の構成や利益への関心の変化、社会と企業との関係、環境変化など。


【各社の経営理念を例示・・・】

●松下電器産業株式会社
  産業人タルノ本分ニ徹シ
  社会生活ノ改善ト向上ヲ図リ
  世界文化ノ進展ニ寄与センコトヲ期ス

●TDK株式会社
  夢・・・・・・常に夢をもって前進しよう。
     夢のないところに、創意と建設は生まれない。
  勇気・・・・常に勇気をもって実行しよう。
     実行力は矛盾と対決し、それを克服するところから生まれる。
  信頼・・・・常に信頼を得るよう心掛けよう。
     信頼は誠実と奉仕の精神から生まれる。

●東芝株式会社
  1.人を大切にします。
    東芝グループは、健全な事業活動を通じて、顧客、株主、従業員をはじめ、すべての人々を大切にします。
  2.豊かな価値を創造します。
    東芝グループは、E&Eの分野を中心に技術革新をすすめ、豊かな価値を創造します。
  3.社会に貢献します。
    東芝グループは、より良い地球環境の実現につとめ、良き企業市民として、社会の発展に貢献します。

●住友商事株式会社
  健全な事業活動を通じて豊かさと夢を実現する。
  人間尊重を基本とし、信用を重んじ確実を旨とする。
  活力に溢れ、革新を生み出す企業風土を醸成する。

●キリンビール株式会社
  私達は、世界の人々の『健康』・『楽しさ』・『快適さ』に貢献します。

●京阪電気鉄道株式会社
  京阪グループは、人の暮らしに夢と希望と信頼のネットワークを築いて、快適な生活環境を創造し、社会に貢献します。


 
Write:2007/11/21