商工会を取り巻く消費税のあらまし

1.改正消費税法のポイント
1)課税売上
:1,000万円以下に
2)簡易課税適用上限:
5,000万円以下に

2.公共法人等の消費税のしくみ
1)一般的な消費税
=課税売上消費税額−課税仕入等消費税額(控除対象仕入税額)
2)
国地方公共団体等の仕入税額控除の計算
補助金、会費、寄付金等
対価性のない収入が5%を超える場合、これを「特定収入」としてこの特定収入に係る金額を一定の計算に基づき仕入控除税額から減額するという調整を行う
商工会は、消費税法別表の「公共法人等」に該当し、この調整計算が必要。
【商工会等における納付消費税額の考え方】
納付消費税額=課税売上消費税額−(課税仕入消費税額−特定収入に係る課税仕入消費税額)
3)課税区分
収入

課税収入
非課税収入
不課税収入
 ├
特定収入
 │├
使途特定
 ││├課税売上のみ
 ││├課・非課共通
 ││└非課税売上
 │└
使途不特定
 └
特定収入外

支出
課税仕入
│├
課税売上のみの仕入
│├課・非課
共通の仕入
│└
非課税売上のみ仕入
非課税・不課税支出

 

3.用語の解説
1)
非課税取引
課税取引になじまないまたは社会政策的配慮から課税しないこととしている取引。
例:土地の譲渡・貸付、利息・保険料、切手、印紙、商品券など

2)不課税取引
課税対象の「国内における資産の譲渡等」や「輸入取引」に当てはまらない取引であり、消費税がかからない取引。
例:補助金、会費(対価が明らかなものは除く)、保証金・敷金、保険金など

3)課税売上割合
=課税売上高(税抜)/課税売上高(税抜)+非課税売上高

※課税売上割合95%以上:調整前控除対象仕入税額から使途特定特定収入税額と使途不特定特定収入税額(調整割合で計算)を控除できる。
※課税売上割合95%未満:課税仕入消費税として控除できるのは「課税売上に対応している部分」のみ。「課税売上に対応している部分」を計算する方法は、「個別対応方式」と「一括比例配分方式」の2通り。

4)個別対応方式
課税仕入に係る消費税額の計算を次の区分にて計算することをいう。
イ)課税売上に要する課税仕入消費税額
ロ)非課税売上に要する課税仕入消費税額
ハ)課税売上と非課税売上に共通する課税仕入消費税額
控除対象仕入消費税額=イの消費税額+(ハの消費税額×課税売上割合)
※支出されたものの収入源を明らかにし控除する。

5)一括比例配分方式
課税仕入消費税額に「課税売上割合」を掛けて算出した税額を「課税売上消費税額」から控除する方式。
控除対象仕入税額=課税仕入消費税額×課税売上割合

6)個別対応方式 と一括比例配分方式の比較
「個別選択方式」を採用した場合、事務量が膨らむ
また、
使途不特定の特定収入が多い(調整割合が高い)場合などは控除する消費税額が少なくなり、納付消費税額が多くなる。

7)特定収入
不課税収入の一部で、租税、補助金、負担金等をいう。
@課税仕入等に係る特定収入
法令、交付要綱等により課税仕入のみに使用することとされている特定収入。例:珠算振興費、販売士更新助成金

A特定収入外不課税収入
特定収入には含まれず、控除対象仕入税額に一切関係のない支出例:貸付金回収、出資金、返還金など
交付要綱等で課税仕入以外の支出にのみ使途が特定されているもの例:人件費補助金、利子補給金、保険金に充てる補助金

B特定収入割合
 
=特定収入/課税売上高+非課税売上高+特定収入

C調整割合
 =
使途不特定の特定収入/課税売上高+非課税売上高+使途不特定の特定収入

D特定収入に係る控除対象仕入税額の調整が必要でない場合
@簡易課税制度を選択する場合(課税売上が5千万円以下)
A特定収入割合が5%未満の場合

4.ここまでのまとめ
1)納付税額
=課税売上に係る消費税額−(課税仕入等に係る消費税額特定収入に係る課税仕入等の消費税額

2)課税仕入に係る消費税額
課税売上割合が95%未満のときは「個別対応方式」か「一括比例配分方式」のいずれかで計算。

3)特定収入に係る課税仕入等の消費税額
特定収入割合が5%超のときに計算し、調整を行う。

4)商工会の消費税申告
商工会は補助金団体という性格上、特定収入割合が高いと想定できる。
そのため、消費税の計算にあたっては、課税売上消費税から課税仕入消費税額を単純に差し引くことで算出することはできず、
特定収入に相当する課税仕入税額分を課税仕入税額から減額する計算が発生する。さらに、課税仕入消費税額については、課税売上割合が95%未満のときは「個別対応方式」か「一括比例配分方式」により控除税額の計算(課税仕入控除税額が変わる)をする必要がある。
以上にように、商工会によっては民間企業では発生しない2段階の調整を経て、納付消費税が算出されることとなり、
いずれ、課税仕入控除税額が減るために、結果として納付消費税額は増えるということになる。

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